経営計画はもう、美しいスライドで取り繕えない。役員自身が計算機に直接アクセスできるようになった今、中身のない言葉は一瞬で値踏みされる。
「ひとつよろしく頼むよ」で済んだ時代の終わり
かつて、役員の曖昧な大号令は、間に立つプログラマーやコンサルタントが翻訳し、計画書として形にしていた。中身が多少空疎でも、誰かが埋め合わせてくれた。
いま、役員自身が、部下やコンサルを介さずにLLMという計算機へ直接アクセスできる。自分が出した指示を、その計算機に読ませれば、化けの皮はすぐ剥がれる。
翻訳者という緩衝材は消え、中身のない計画は、本人の言葉のまま晒される。
日産「The Arc」という実例
2024年3月、日産は中期経営計画「The Arc」を発表した。威勢のよい言葉が並ぶ、よくある壮大な経営計画のひとつである。
その後の決算では、2024年度の最終赤字6,709億円、7工場の閉鎖、2万人規模の人員削減が発表された。計画の是非をここで断定するつもりはない。ただ、発表された言葉と、その後の数字との距離だけは、誰の目にも明らかだ。
美しいグラフィックで期待値を作るコストが上がった
かつて、見栄えのいいグラフや右肩上がりのイメージ図は、中身の薄さを覆う安価な手段だった。投資家も従業員も、スライドの完成度で納得していた。
いまは、同じ資料をLLMに読ませれば、前提の矛盾や具体策の欠如は、グラフの美しさとは無関係に露呈する。LLMがまず拾い出すのは次のようなものだ。
- 根拠が示されていない前提
- 数字同士の整合性が取れていない箇所
- グラフの美しさと中身との乖離
期待値を演出するコストは、静かに、しかし確実に高騰した。あなたの会社の経営計画は、LLMの目利きに耐えられるか。