どれほど巨大な企業でも、AIビジョンは空中戦をしている

高いAIを入れれば勝手に片付く、という期待は外れる。本当に効くのは現場の訓練と、経営層のAI理解だ。

Ren Kato

どれほど巨大な企業でも、AIへのビジョンは空中戦をしていることが多い。AIの本質を理解した上での長期戦略を持つ企業は、驚くほど少ない。

「高いAIを入れれば、勝手に片付く」という誤解

大企業の基幹システムには、何十年分もの古いコードが積み上がっている。これを解析する高額なAIサービスを入れれば、自動でモダナイズされる——そう期待する経営層は少なくない。

現実には、効果は限定的だ。劇的なコスト削減にはつながらないことの方が多い。何十年分もの業務知識が、コードの中に暗号のように埋め込まれているからだ。

AIサービスは魔法の杖ではない。既存の資産の複雑さは、お金で一気に消せるものではない。

本当に効くのは、現場を鍛えること

効果を出している現場でやっているのは、もっと地味なことだ。自社のコーディングの流儀をAIに学ばせ、現場のエンジニアを鍛え、小さな単位で分析と実装を回す体制をつくる。

派手さはないが、こちらの方がずっと効く。高いAIサービスの契約書よりも、現場の訓練の方が結果を左右する。

経営層がAIを理解していないという根本問題

根本の問題は、現場ではなく経営層にある。AIとはつまるところ、国語ができるようになった計算機だ。だが、それを万能のスーパーマンだと思い込んだまま意思決定している経営層は多い。

さらに悪循環をブーストするのは、AIソリューションを提案するITベンダーである。AIが全知全能の神であるかのようなファンタジーをドヤ顔で語るのだ。そして、その文末は「〜らしい」。
テクノロジーのプロでありながら、その実態はネットで拾った断片的なキーワードで”詳しい人”を演じるが「時代の波に乗り遅れたくない」という意識が透けて見える。

ITベンダーに振り回されてAIサービスをいくつ買うかより先に、経営層自身がAI(=国語の電卓)の本質を理解し、長期のAI戦略を持つこと。それが最優先だ。

空中戦は、現場をどれだけ鍛えても終わらない。終わらせられるのは、経営層だけである。


この覚書は、執筆中の書籍の構想メモです。論証の全体は、書籍の中で展開します。

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